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胃癌リスク検診(ABC検診)
日本人にとって胃癌は最も身近な癌です
- 日本人にとって古くから胃癌は非常に重要な病気でした。1990年代までは胃癌の死亡者数は全癌の中で第1位でしたが、現在は肺がんに抜かれ第2位となっています。しかし今でも毎年約50.000人の患者さんが胃癌で死亡しており、この数は1970年代からほぼ変わっていません。
総死亡者数の年次的推移(肺癌と消化器癌)
- 罹患率(病気にかかる率)は部位別で第1位であり、毎年12万人以上が胃癌にかかっています。患者数が最も多く、とても身近な癌だと言えます。
また、胃癌は早期に発見できれば、ほぼ100%治癒する事が可能である治療成績の良い癌であるため、検診による早期発見・治療がとても重要です。
胃癌の原因
- 胃癌の原因で最も重要なのは胃粘膜へのピロリ菌感染です。
- ピロリ菌は幼少期までに感染し、胃に持続する炎症(慢性胃炎)を起こします.炎症が続くと徐々に胃粘膜が老化し(胃粘膜萎縮)、老化した胃粘膜から癌が発生します。
- 胃癌の原因は、ピロリ菌感染によって起こる胃の老化現象なのです。逆に、ピロリ菌感染のない胃は老化現象が起きないため胃癌になることはほとんどありません。
胃癌リスク検診とは?
- 胃癌リスク検診とは、胃癌の原因であるピロリ菌感染と胃の老化現象を同時に採血で評価する検診です。具体的には、血清ピロリ菌抗体価(ピロリ菌感染を評価)、血清ペプシノゲン値(胃の老化現象を評価)を測定し、組み合わせによりA群、B群、C群、D群の4群に分類します。
- A群はピロリ菌に感染していない若い胃であり胃癌リスクはほとんどありません。
- B群以上はすべてピロリ菌に感染しており、B→C→Dの順に胃の老化が進行していきます。胃癌の発見率はB群で1000人に1人 C群で500人に1人 D群で80人に1人程度と言われており、胃の老化が進むにつれて胃癌になる確率は高くなる事がわかります。(ABC検診の絵)
- 市川市では平成25年4月から胃癌リスク検診を導入しています。毎年実施され、対象はその年の40、45、50、55、60、65、70、75歳の方です。特定の年齢の方を対象とした節目検診です。
胃癌リスク検診の注意点
- 胃癌リスク検診は胃癌の原因であるピロリ菌感染と胃の老化を評価できる非常に優れた検診ですが、あくまで胃癌になりやすさを見るためのものであり、胃癌を直接調べる検査ではありません。
- B群以上の判定であった場合には、必ず精密検査である内視鏡検査を受け胃癌にかかっていないかを調べる事が重要です。
- 以下の項目に該当する方は検診対象から外れるため注意が必要です。
- 既になんらかの自覚症状がある方
- 胃酸を押さえる薬(プロトンポンプ阻害薬)を服用中の方
- 胃を切除された方
- 腎機能障害をお持ちの方
- 既にピロリ菌除菌治療を受けた方
当院では胃癌リスク検診の精密検査を行っています
- 胃癌リスク検診でB群以上と診断された方は全員精密検査の対象であり、上部消化管内視鏡検査を受ける必要があります。
- 当院では胃癌リスク検診でB群以上であった方の精密検査(内視鏡検査)を実施しています。内視鏡検査の際に、点滴による麻酔を使用するため苦痛無く検査を受ける事が可能です。なお、麻酔を希望される場合には自転車、お車の運転は控えて頂きます。
- 当院での胃癌リスク検診精密検査の結果は以下の通りです。(ABC検診の結果)
- 当院では,2015年3月20日現在307例の方に精密検査を行い、14例の胃癌を発見しました。胃癌発見率は4.6%であり、この値は過去のデータと比較すると非常に高い数字です。
- さらに、14例中12例は早期胃癌で根治切除が可能であった事から、胃癌リスク検診とその後の精密検査の重要性が改めて証明されました。
- 当院では、最新の設備を用い、質の高い診断により胃癌の早期発見、早期治療に努めております。是非、御気軽に御相談ください。
(文責 青木洋一郎)