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麻酔科・ペインクリニック
麻酔科のご紹介
外来診療について
麻酔科・ペインクニリックの痛み診療
痛みに対する治療はどの診療科でも行われていますが、麻酔科・ペインクリニックには、痛みの原因となる疾患の治療を進めても痛みが取りきれない方や、痛みの原因がうまく見つからないため他の診療科から紹介された方などが多く受診されます。自分に起こっている痛みについてよく調べてみて、麻酔科・ペインクリニックを自ら受診される方もおられます。
麻酔科で行っているペインクリニックは、神経ブロック注射を多く取り入れているところが他の診療科で行っている痛み治療ともっとも違う点だと言えるでしょう。神経ブロックはどんな痛みにも効く治療法というわけではありません。麻酔科・ペインクリニックを受診される患者さんの痛みやその治療法の中で、頻度の高いもののいくつかを紹介いたします。
麻酔科・ペインクニリックでよく診る痛み
1.帯状疱疹に関連する痛み 子供のころに罹った水痘(水ぼうそう)のウイルスは末梢神経の中に潜伏した状態となっています。疲れや加齢、その他の理由で免疫力が低下した際に、神経の支配領域に一致してこのウイルス(水痘帯状疱疹ウイルス)が再活性化します。通常の鎮痛薬を内服しても痛みが取りきれない場合でも、麻酔科・ペインクリニックで行っている治療が有効な場合があります。 帯状疱疹の痛みに対する治療で重要なことは、皮疹が消失した後に長期間続く神経痛(帯状疱疹後神経痛)への移行を抑止することです。高齢や、皮疹が重症で痛みがとても強いことなどが、帯状疱疹後神経痛の状態へ移行することの危険因子だとされています。また女性のほうが男性よりも帯状疱疹後神経痛となる頻度が高いといわれています。 皮疹が治りきっていない状態で痛みが激しい場合、麻薬など通常の診療科ではあまり処方されない強力な鎮痛薬が必要となる場合があります。「病気そのものを治す治療ではないのだから、痛み止めを飲むのは我慢する」と考える患者さんもいらっしゃいますが、「痛みが強いこと」自体が帯状疱疹後神経痛の危険因子であることから、痛みを除去することがとても重要だと考えることができます。 また、神経ブロック治療を行うことが帯状疱疹後神経痛の発生を予防するとした研究もあります。神経ブロックは局所麻酔薬や消炎鎮痛薬(ステロイドなど)を帯状疱疹の状態となった神経周囲に注射して行います。神経ブロックは非常に強力な鎮痛法ですが、この方法でも痛みが軽減しないほど重症の場合、硬膜外刺激電極を一時的に利用する方法が用いられる場合もあります。 |
2.特発性三叉神経痛 この神経痛では、顔面の片側に電撃のような特徴的な痛みが発生します。風が当たる、物が触れる、食事のため咀嚼する、などが痛み発作の誘因となる場合もあります。顔面の感覚を司る脳神経(三叉神経)に周囲の血管が触れた状態となって発生することが多いとされています。他の原因(脳腫瘍など)によって三叉神経痛が起こっていないかどうか診断することも重要です。内服薬以外の治療手段としては、特発性三叉神経痛の原因となっている血管と三叉神経を離した状態とするための手術が最も有効だとされています。しかし、高齢などの理由で手術が適切ではない場合、神経ブロック(高周波熱凝固)が選択肢の一つとなります。神経ブロック針の先端を三叉神経の本体(ガッセル神経節)の近くまで挿入し、ペインクリニック専用のラジオ波発生装置を利用して、狭い範囲を熱凝固させる方法です。神経ブロックに先立ってCT撮影を行い、三叉神経の枝が頭蓋から外に出る場所(卵円孔)を特定します。ブロック針はX線透視装置で針先の位置を確認しながら慎重に卵円孔に向けて進める必要があります。痛みの誘発点(トリガー)が顔の表面にある場合は,おとがい孔や眼窩下孔など末梢からより安全な神経ブロックを施行できる場合もあります. 熱凝固後に神経が再生することにより痛みが再発することもありますが、本ブロックは他の侵襲的治療法(手術やガンマナイフなど)と異なり繰り返し施行できるところが長所だと言えます。 |
3.複合性局所疼痛症候群(CRPS) 四肢の外傷や骨折後に「原因に対して不釣り合いな」非常に強い痛みが発生することがあります。ギプスをしている状態で起こることもあります。痛みの起こっている手足と反対側の手足を比較して腫れた状態となっている、汗のかきかたが異なるなどの特徴があります。慢性的な状態となり、強い痛みにより関節の動きが障害されると日常生活にとって大きな支障となります。症状が慢性的な状態へと移行しないよう出来るだけ早期に治療を開始することが重要です。急性期では、ステロイドを用いた治療や交感神経ブロックなどを行います。 十分な治療にも関わらず慢性的な状態に移行してしまった場合、関節の拘縮を食い止めるためのリハビリが重要だとされています。痛みのため十分なリハビリが行えない場合、神経ブロックや、場合によっては全身麻酔を併用してリハビリを行います。 交通事故などが原因で複合性局所疼痛症候群となった場合には、そのような状態であることを診断することが重要となります。骨シンチやMRI撮影などを行い、客観的な評価を行います。当院では複合性局所疼痛症候群の客観的診断に力を注いでいます。 |
急性期の痛みに対する神経ブロック治療について
頚椎症による上肢のしびれや腰椎椎間板ヘルニア、変形性腰椎症などによる坐骨神経痛に対して、局所麻酔薬や消炎鎮痛薬(ステロイドなど)を利用した神経ブロックが有効な場合があります。背骨や骨盤の関節のずれや炎症によって発生する腰痛や殿部痛にも効果が得られる場合があります。神経の炎症に対する治療であることから、慢性的な痛みより、最近発生した痛み(急性痛)に対してより有効性が高いと考えられます。しかし慢性痛でも急に悪化した場合(急性増悪)などは治療の選択肢となり得ます。X線透視装置や超音波診断装置を利用して神経ブロックを行うことで、より有効性の高い治療が可能だとされています。
慢性的な痛みに対する神経ブロック治療について
慢性的な痛みに対してラジオ波発生装置を利用した末梢神経に対する高周波数熱凝固を行うことにより、長期的な痛みの軽減が得られる場合があります。腰椎椎間関節の変形が原因となる腰痛や骨盤の関節(仙腸関節)のゆがみなどが原因の殿部痛などが治療の対象となります。
手術に関連する診療について
術前の診察について
手術にともなう痛みや、出血をはじめとするその他の侵襲(ストレス)が原因となって発生する合併症を未然に防ぐため、手術に先立って麻酔科の診察を行います。この術前診察では、術中・術後の患者さんの状態に大きな影響を与える心筋虚血(狭心症や心筋梗塞)の起こりやすさに関する評価を中心に診察を進めていきます。日常的にある程度以上の運動を行っている方は周術期(術中・術後)に心筋虚血を起こす可能性は低いと言われています。日常の活動量(運動しているか、など)や、場合によっては普段行っている仕事の内容などについて質問を行います。また、抗血小板薬や抗凝固薬(いわゆる、血をサラサラにする治療)を内服している場合、それらのお薬を継続する事や中止することは周術期の安全性に大きな影響を与えます。お薬を中止したほうが良いか、継続するべきかについては、計画された手術の大きさや、患者さんの状態によって、一人ひとり異なるのです。他の病院で処方されているお薬や、ご自身で購入して使用しているサプリメントなどについても質問を行います。術前診察をお受けになる際は、お薬手帳をお持ちください。
手術中の麻酔について
手術のための麻酔は「鎮痛」と「鎮静(睡眠)」をそれぞれの患者さんにとって最適な状態となるようにバランスさせて行います。鎮痛は点滴から行うことが多いのですが、手術の内容によって、術後の痛みが強いと予想される場合は、硬膜外麻酔や脊髄くも膜下麻酔(いわゆる下半身麻酔)、末梢神経ブロックを併用することもあります。同じ方法の手術を受ける方々には出来るだけ同じ方法で麻酔を行うように心がけておりますが、患者さんの状態によっては最適な方法がほかの患者さんと異なる場合もあります。そのような場合は、術前診察の際に説明を行っております。